知床

Shiretoko

知床

知床の概要

知床五湖と大自然
北海道 知床五湖と大自然 © T-KIMURA Licensed under CC BY 4.0

知床は北海道の北部にある、長さが約70㎞、幅約25㎞の細長い半島です。知床半島中央にはプレートや火山活動によって誕生した標高1500m級の知床連山がそびえ、海岸線との距離が短く、海側は断崖が続きます。周囲のオホーツク海では北半球の最も低緯度で流氷を観測できます。

厳しい環境に守られて、知床半島北部は、貴重な自然とその生態活動がいまも綿々と営まれている、大変稀有な地域となっています。こうしたことから、知床半島北部の知床国立公園と周辺を含む71,000haが2005年7月に世界遺産に登録されました。

流氷と豊かな食物連鎖

フレペの滝とオホーツク海の流氷
フレペの滝とオホーツク海の流氷 © kage1128 Licensed under CC BY 4.0

知床の特徴は、地上の動植物と海洋システムが綿々と繋がってダイナミックな一大食物連鎖システムを営んでいることにあります。そしてこのシステムのカギを握っているのが、有名な知床の流氷です。

流氷は、同じオホーツク海ながらも、知床から離れた北部オホーツク海で形成されます。オホーツク海というのは塩分濃度に特徴のある海で、アムール川の淡水がそそぎ込んで塩分濃度が極端に低い上層部の表層が寒気で凍って流氷となります。2月から3月にかけて東樺太海流に乗って流氷が南下するとき、その下にある低温で塩分が濃い層が豊かな栄養を知床周辺海域へと広げていきます。

また流氷自体も大切な役割をします。流氷のなかでは、氷の中のリンや窒素を養分とする植物プランクトン・アイスアルジー(珪藻類)が成長し、春になって流氷が解け始めると日差しを浴びて大繁殖します。これをえさとする動物プランクトンが大発生して魚が集まり、アザラシ、トドなどの海獣に捕食され、最後にシャチへとつながっていきます。また、海で育ったサケやマスは産卵のために川に上り、そこでヒグマなどのえさとなります。

そしてもう一つ、流氷の動きも重要です。風や潮の流れで激しく流氷は、沿岸の海藻を削り取り、浅瀬の岩場にコンブの森が形成されます。ここで魚やアザラシが育まれていくのです。

こうした一大食物連鎖が営まれるのが知床であり、大変稀有な地域なのです。

世界遺産に登録された経緯

冬のフレぺの草原

知床が世界遺産に登録された理由として、一つは、こうした海から地上に至る綿密な食物連鎖が変わらず保存されていることがあります。周辺海域では世界的にも貴重なマッコウクジラが確認されるなど、地球全体から見ても非常に重要な場所となっています。

また、動植物の多様性や希少動物の生息も知床の特徴です。半島中央の知床連山は半島東西で異なる気候をつくり出し、人を寄せ付けない原生林は動植物のゆりかごとして生命活動を支えてきました。シマフクロウやシレトコスミレなどの絶滅危惧種が分布し、ヒグマやエゾシカなどの大型動物が世界的に見ても非常に多く生息するなど、豊かな自然と生物の多様性が密接にかかわっています。

そして、こうした動植物の生態や自然環境全体を早くから観察・保護してきた活動が組織的に確立されていたことです。自然科学・社会科学の視点からの計画立案ができる組織的保護管理体制が評価されました。

知床半島で見逃せないスポット

オコツク展望台より知床連山

知床は自然環境への理解を深めつつ、実際に貴重な生態系の営みの一端を見ることができる大変貴重な地域です。ぜひ、地域に点在する環境保護センター(知床世界遺産センター、羅臼ビジターセンター、知床世界遺産ルサフィールドハウス、知床自然センターなど)を利用してみてください。生態系や環境への理解を深められるほか、研究者や専門家による各種の豊富な自然観察ガイドツアーへ参加すれば、より深い体験をすることができます。知床滞在がより忘れられないものとなるでしょう。

知床岬とその周辺

知床の断崖

知床で動植物をはぐくむ半島北部は原生林として残っています。原生林に入る道路はなく、人間の手が入らないことで守られている地域です。有名なヒグマはときおり国道付近まで姿を見せることも。もし、少しでも高い確率でヒグマをみたいなら、ヒグマの生息域である半島北部を訪ねてみてください。ウトロから各種観光クルーズ船で知床岬付近へ行くルートがあり、途中ヒグマの遭遇率が高いエリアを通ります。またイルカやクジラに会えるルートでもあります。

美しい知床連山を望む知床五湖

知床五湖
知床五湖

知床五湖は奥に知床連山を望む美しい景勝地で、四季により姿を変える知床の自然を満喫できるルートが整備されています。ウトロから車で約30分の知床五湖駐車場からは2種類の歩道を散歩することができます。高架木道は気軽に歩ける段差なしの1.6kmです。もう一つの自然遊歩道はヒグマの居住エリアを通るため、安全のための事前登録やレクチャーなどが必要となり、時期によってはガイドツアーへの参加が必須になります。

温泉の滝カムイワッカ湯の滝

カムイワッカ湯の滝

知床五湖駐車場からさらに奥にあるのがお湯の流れるカムイワッカ湯の滝です。幅の広い沢はお湯が流れ、さかのぼって上に進むとプールのような一の滝の滝つぼが現れます。こちらは水着で温泉につかる人々でいつもにぎわっています。なお沢登りは大変滑りやすいため、事前に靴下などを用意しておくとよいでしょう。売店でも特別な靴下を販売しています。

その他の知床観光

夕刻のウトロ漁港(知床半島)
夕刻のウトロ漁港(知床半島) © T-KIMURA Licensed under CC BY 4.0

羅臼湖トレッキング、知床峠ドライブ、迫力のあるオシンコシンの滝、また流氷ウォークなど、知床の見どころはつきません。環境保護センターで入手できる日々の情報を利用して、四季折々の知床を体験しましょう。


国名 / エリア アジア / 日本
登録年 2005年
登録基準 自然遺産 (ix) (x)
備考 ■関連サイト
Shiretoko(UNESCO)

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