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ハワイ火山国立公園の概要
ハワイ火山国立公園は、アメリカ合衆国のハワイ州ハワイ島の南部に広がる国立公園です。
マウナロア山とキラウエア火山の二つの巨大な活火山で構成され、1987年に世界遺産に登録されました。
この場所では世界で最も活発な火山活動を、最も安全に見ることができます。
世界遺産登録の経緯
ハワイ火山国立公園は、キラウエア火山と、その西に位置するマウナロア山を含めた、324.4㎢という広大なエリアに及びます。
国立公園は、世界的にみても最も活発に活動している火山を含み、地球の歴史においても、地学的・生物学的に重要な特性を持ちます。このことが評価され、1987年に世界遺産に登録されました。
この場所では、火山活動により大地が破壊されるともに、今まさに新しく創造されていく瞬間を見ることができます。
溶岩は、海に流れ落ちてもまだ赤く燃えているのが見え、水蒸気が吹き上がる様子は、まさに地球活動の「天地創造」の瞬間といってよいでしょう。その瞬間を見ることができるのが、ハワイ火山国立公園の特徴の一つです。
火山活動だけではなく、この一帯は、溶岩流の跡、熱帯雨林、溶岩洞窟などの自然の脅威や多様性も、世界遺産登録として評価された理由です。
構成資産
マウナロア山
ハワイ語で「長い山」という意味です。体積は約7500k㎥であり(富士山は1400㎥)、世界で最も体積の大きい山です。溶岩の粘土が低く極めて流動的なため、斜面がなだらかで盾を伏せたような形が特徴的です。
しかし激しく噴火することはほとんどなく、多くの噴火が溶岩の噴泉から溶岩流が流れる姿で、これは「ハワイ型噴火」とも呼ばれています。ハワイ型噴火は非爆発的であり、山の斜面の傾斜がなだらかなことが特徴です。
キラウエア火山
キラウエア山は、カルデラを中心として南の海岸へと下る道の両脇にあらわれるクレーター群により構成されています。
クレーター群のラインは北西へと伸びており、それはオアフ島など北西ハワイ諸島へとつながり、2400kmにもなる島々を形成しています。
歴史
ハワイ火山国立公園は、1916年にマウイ島のハレアカラ山域とともに国立公園に指定され、1961年にはマウイ島側が分離しハレアカラ国立公園として新たに指定されます。
そして1987年に、ユネスコの自然遺産として世界遺産に登録されました。
キラウエア火山は、およそ60万年〜30万円前に海底にて山が形成され始め、10万年前ほど前に海面からその姿をあらわしたと考えられています。
先住民であるポリネシア人がハワイ諸島へ渡ってきたのが西暦500年ごろだといわれていますので、そのはるか前の出来事といえるでしょう。
二つの構成資産では、1983年以降ずっとキラウエア山が、1984年にはマウナロア山がそれぞれ噴火しました。とくにキラウエア火山の噴火活動は近年でも活発であり、最近では2016年に島東端のパポアという町まで溶岩が襲いました。1980年代には、カラパナの町全体を溶岩が呑み込みます。
火山は、地球という存在がまだ形成過程であることの証です。ハワイ火山国立公園では、そのことをじっくりと自分の目で確かめることができます。
特徴
国立公園の面積は、ハワイ島の約3%を占めます。
ハワイ島の火山の特徴は、比較穏やかな噴火をするという点です。爆発的な噴火が少なく、溶岩流も火口も安全に観察できることが特徴です。そのため、とくにキラウエア火山は、「世界一安全な火山」ともいわれます。
標高1248mのキラウエア火山の中心となるのが、周囲12kmを要する巨大なキラウエア・カルデラです。そしてその中心にはハレマウマウ火口があります。
このハレマウマウとは、「マウマウのすみか」という意味です。マウマウとは、アマウという葉っぱがV字状に開くシダという植物です。なぜ、この場所がアマウのすみかというのかというと、この火口のクレーターには火の女神ペレとともに、ペレの夫であるカマプアアという神がいると信じられていたためです。そしてカマプアアは結婚する前、アマウの森にいました。
このようにハワイ火山国立公園は、伝統文化に基づく信仰と自然現象が深く結びついた世界遺産なのです。
必見ポイント
キラウエア火山
キラウエア火山は、ハワイ先住民の聖地とされます。20年以上にもわたり現在でも噴火活動を続けているのにも関わらず、世界で最も安全に観察できる火山です。
そして火山の中心には、キラウエア・カルデラと呼ばれる火口があります。直径4.5kmほどのカルデラの周囲をクレーター・リム・ドライブという道路が通っており、車で運転しながら見ることもできます。
チェーン・オブ・クレーターズ・ロード
キラウエア・カルデラを取り囲むクレーター・リム・ドライブから南へ、溶岩の間を海へと向かって30km走る道路が、このチェーン・オブ・クレーターズ・ロードです。周囲は、溶岩で形成された大地が広大に広がっています。
ジャガー博物館
1985年に建てられたジャガー博物館は、アメリカの地質学者でありハワイ火山研究所を開設したトーマス・A・ジャガー博士にちなんで名付けられました。
館内には、博士の経歴や地震観測計などの火山に関観測に必要な機材や、溶岩、噴石などが展示されています。
キラウエア・イキ・クレーター
キラウエア・カルデラの東側に位置するクレーターで、直径1.6kmのクレーターです。イキとは、ハワイ語で「小さい」を意味します。
サーストン溶岩洞
クレーター・リム・ドライブの東端にあるラバ・チューブとも呼ばれる溶岩洞です。溶岩洞とは、溶岩が流れるときに外側が固まり始めてもなお、内側が流れ続け、トンネルのように中が空洞になってしまった姿をいいます。
このサーストン溶岩洞は、500年ほど前にできたようです。
マウナロア山
標高は4169mで高さはハワイ島で2番目に高い山ですが、世界一大きい体積をもつ山でもあります。その大きさは、アメリカのシエラネバダ山脈がすっぽりと入ってしまうほどです。
標高2301mのところには、展望台が設置されてあります。道路は狭く運転には注意が必要ですが、車でも行くことが可能です。展望台からは、ハレマウマウ火口など、キラウエア火山一帯を眺めることができます。
キラウエア・ビジターセンター
キラウエア・ビジターセンターは、国立公園を訪れたときには真っ先に行きたい場所です。火山の活動状況や道路情報などを、随時チェックできます。
また、25分間程度の火山についてのビデオ上映、ハワイ島の生態系やハワイ文化についての情報も展示されており、大変勉強になるセンターです。
サルファー・バンクスとスチーム・ベント
キラウエア・ビジターセンターの近くには、サルファー・バンクスという硫黄で黄色くなった岩山が見られます。キラウエア山が水蒸気と共に硫黄ガスを噴き出している場所であり、黄色い硫黄の結晶が見ることができます。有毒な火山ガスも発生していますので、深く吸わないようハンカチなどで鼻と口を覆いながら見学するとよいでしょう。
さらにビジターセンターからクレーター・リム・ドライブを西方向へ1.2kmほど行くと、四角い柵をした穴があります。これがスチーム・ベントです。これは、雨水が地下の熱に熱せられ、裂け目から水蒸気となって出てきたものです。
国名 / エリア | アメリカ合衆国 / アメリカ大陸 |
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登録年 | 1987年 |
登録基準 | 自然遺産 (viii) |
備考 | ■関連サイト Hawaii Volcanoes National Park(UNESCO) |