ポン・デュ・ガール(ローマの水道橋)

Pont du Gard (Roman Aqueduct)

概要

南仏プロヴァンス地方の古都アビニョンから約25kmのところに位置するポン・デュ・ガール。ガルドン川に架かる全長275m、高さ49mの巨大な水道橋です。

ポン・デュ・ガールは、水源から50km離れたローマ都市ネマウスス(現在のニーム)に給水するために、築かれた約50kmにわたる水路の一部です。高度な土木技術を有することで知られる古代ローマ人ですが、ポン・デュ・ガールの精緻な造りは、現代の私たちでも驚くべきものがあります。

古代ローマ人の知恵と努力の結晶とも言えるポン・デュ・ガールは、1985年に世界文化遺産に登録されました。

観光地としても大変人気があり、ポン・デュ・ガールの美しい姿は、5ユーロ札にも描かれています。

歴史

古代ローマ都市では、浴場や噴水などが建設され、水をふんだんに使うことが美徳とされており、水の供給は町づくりのうえで、大変重要なことでした。

古代ローマの主要都市であったネマウスス(現在のニーム)は人口が増加し、水不足に陥りました。それを解消するため、紀元前19年ごろ、アウグストゥス帝の腹心アグリッパはネマウススからおよそ50km離れた水源地ユゼスから水を引くための水路の建設を命じます。

ポンプがない時代、傾斜を利用して建設する方法がとられますが、水源地からの高低差はわずか17mほど。1kmあたり34cmという微妙な勾配を水がスムーズに流れるようにするという設計を成し遂げました。

ガルドン川の深い渓谷を渡るためにも工夫が必要で、ここで当時としては革新的なポン・デュ・ガールの3層アーチ構造が生み出されたのです。しかも、アーチを構成する石灰岩の大きさを統一して大量生産することにより、全長275m、高さ49mの巨大な橋をなんとわずか5年で完成させました。

このような高度な技術を駆使して、見事に町へ水道を通すことに成功し、1日に約2万㎥もの水を供給していました。

ポン・デュ・ガールは、600年以上にわたって人々の生活を潤してきましたが、紀元4世紀ごろから整備が疎かになり、水路としての役目は終えてしまいます。その後は人々がガルドン川を渡るための橋として活躍し、現在でも素晴らしい保存状態で残っています。

古代ローマ人の高度な技術力を今に伝え、文化の象徴でもあるポン・デュ・ガールは、1985年に世界文化遺産に登録されました。

必見ポイント

ガルドン川に架かる美しい景観

ポン・デュ・ガールとガルドン川
Pont du Gard by yannick lecenes, on Flickr

観光地としても大変人気があるポン・デュ・ガールは静かで穏やかな緑の自然の中にあります。ガルドン川に架かるその美しい姿は2004年、フランスの偉大なる景勝地に指定されています。

3層のアーチ構造

ポン・デュ・ガール
Pont du Gard by Txaro Franco, on Flickr

美しい3層のアーチ構造はポン・デュ・ガールの特徴です。蓋がついていて、水路で水が通っていた上層には35個のアーチがあり、中層は11個、下層は6個とアーチの形を次第に大きくすることで強度を増すように造られています。

この美しいアーチは白亜紀の石灰岩を積んで作られていますが、使用されたものの中で、最も重いものはなんと6トンもの重さがありました。側面に突出している石は建設時に足場の役割を果たしていました。

古代ローマの歴史が学べるミュージアム

ポン・デュ・ガールのミュージアム
Pont du Gard museum by damian entwistle, on Flickr

ポン・デュ・ガールの左岸にあるミュージアムでは、建造の工程や古代ローマの歴史に関する展示を見て学ぶことができます。バーチャルリアリティーでの再現、実物大の複製や模型など、当時の様子を知る工夫が随所になされています。特に水道が通ったことによって豊かになった人々の生活の再現は必見です。

建築への興味の有無に関わらずポン・デュ・ガールの理解を深めるために、ぜひ訪れておきたいスポットです。


国名 / エリア フランス / ヨーロッパ
登録年 1985年 / 拡張年2007年
登録基準 文化遺産 (i) (iii) (iv)
備考 ■関連サイト
Pont du Gard (Roman Aqueduct)(UNESCO)

歴史的建造物をいくつも建設したアグリッパ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です