カミ遺跡群国立記念物(Khami Ruins National Monument)は、ジンバブエ南西部、ハラレから約22キロメートルに位置する中世都市遺跡で、1986年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。カミは、かつて15世紀から17世紀にかけて栄えたトゥルワ族(Torwa dynasty)の首都であり、グレート・ジンバブエの衰退後にその文化と政治的権威を継承した重要な都市遺跡です。遺跡は丘陵地帯に広がり、丘の上の居城、城壁に囲まれた居住区、儀式用の広場や石造構造物群など、当時の都市計画と社会構造を示す構造が残されています。
カミ遺跡の特徴の一つは、高度な乾式石積み技術(dry stone walling)による石壁構造です。石は漆喰や接着剤を使用せず、巧みな積み上げによって建設されており、グレート・ジンバブエの建築技術を継承・発展させたものと考えられています。特に、複雑なテラス状の建築群や石段、城壁で区切られた居住区は、権力者の居住空間や行政・宗教の中心として機能していたことを示唆しています。これにより、当時の社会の階層構造や統治体制の高度さを理解する貴重な手がかりとなります。

考古学的調査により、カミでは陶器、鉄器、金製品、装飾品などの日常生活用品や交易品が多数発見されており、当時の住民が広範な地域と交易ネットワークを築いていたことが分かります。特に、東アフリカ沿岸やインド洋交易圏との関係を示す貿易品も見つかっており、カミは単なる地方都市ではなく、地域的・国際的に重要な政治経済の拠点であったことを示しています。
また、カミ遺跡群は文化的・宗教的機能をも担っていたと考えられています。丘上の居城や祭祀用の広場は、王権の象徴としての政治的・儀礼的中心であり、先祖崇拝や精霊信仰の場としても機能していた可能性があります。これにより、建築物は単なる居住や防衛のためだけでなく、社会秩序や精神文化の表現としての意味も持っていたことが分かります。
保全面では、カミ遺跡は自然環境や観光利用、過去の侵食や盗掘の影響を受けやすいことから、ジンバブエ政府による国立記念物としての保護・修復活動が行われています。訪問者は、遺跡を散策しながら、中世アフリカ文明の都市計画・建築技術・文化の高度さを直に体感できる貴重な機会を得ることができます。
総じて、カミ遺跡群国立記念物は、グレート・ジンバブエ文化の延長線上にある中世都市の代表例であり、建築技術、交易ネットワーク、社会構造、宗教儀礼の総合的な理解を可能にする遺産です。アフリカ南部の歴史と文化を学ぶ上で不可欠な遺跡であり、現代においても、ジンバブエの国家的・文化的アイデンティティの象徴として重要な役割を果たしています。
| 国名 / エリア | アフリカ / ジンバブエ |
|---|---|
| 登録年 | 1986年 |
| 登録基準 | 文化遺産 (iii) (iv) |
| 備考 | ■関連サイト Khami Ruins National Monument(UNESCO) |
