カフジ-ビエガ国立公園

Kahuzi-Biega National Park

カフジ-ビエガ国立公園(Kahuzi-Biega National Park)は、コンゴ民主共和国東部、キブ湖の西岸に位置する熱帯雨林と火山地帯を含む自然保護区で、1980年にユネスコの世界自然遺産に登録された。公園の名称は、園内にそびえる2つの死火山「カフジ山(3,308m)」と「ビエガ山(2,790m)」に由来している。面積はおよそ6,000平方キロメートルに及び、コンゴ盆地熱帯雨林から山地林、竹林、高山草原まで、標高差によって劇的に変化する多様な自然環境が広がっている。

この公園の最大の特徴は、絶滅危惧種の「東方ローランドゴリラ(グラウアー・ゴリラ)」の最大の生息地であることだ。東方ローランドゴリラは、体長が1.8メートル、体重200キログラムを超えることもある世界最大のゴリラであり、現在世界に約3,000頭しか残っていない。そのうち相当数がカフジ=ビエガの森に暮らしている。公園では、1960年代からゴリラの研究と保護活動が行われ、霊長類学者や自然保護団体の支援により、野生ゴリラの観察とエコツーリズムの拠点として国際的に知られるようになった。

自然環境の多様性もこの公園の大きな魅力である。低地の熱帯雨林では、オカピ、チンパンジー、アフリカゾウ、レイヨウ類などが生息し、高地では竹林やシダ類が広がる冷涼な森が見られる。植物は約1,000種以上、鳥類は約350種が確認されており、アフリカでも屈指の生物多様性の宝庫となっている。また、山頂部からはキブ湖やヴィルンガ山地を一望でき、火山地形と熱帯林が織りなす壮大な景観が広がる。

しかし、カフジ=ビエガ国立公園は長年にわたり深刻な脅威にさらされている。1990年代の内戦や武装勢力の侵入、密猟、森林伐採などにより、生態系は大きな損害を受けた。とりわけゴリラの個体数は激減し、一時は絶滅の危機に瀕した。そのため、1997年に「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録され、現在も国際的な保護支援が続けられている。公園レンジャーたちは危険な状況の中で職務を遂行しており、その献身的な活動は世界的に高く評価されている。

ユネスコはこの地を、「アフリカ熱帯雨林の生態系と大型霊長類の進化を示す、極めて重要な自然遺産」として評価している。カフジ=ビエガは、火山活動によって形づくられた大地と、そこに息づく生命の豊かさを同時に伝える場所であり、地球の進化と生命の共存を象徴する自然の聖域である。

カフジ=ビエガ国立公園は、戦乱と密猟の傷跡を抱えながらも、今なお生命の回復と希望の象徴として、アフリカ中央部の森に静かに息づいている。その深緑の中で生きるゴリラたちは、人類に自然との共生の尊さを語りかけ続けている。


国名 / エリア アフリカ / コンゴ民主共和国
登録年 1980年
登録基準 自然遺産 (x)
備考 ■関連サイト
Kahuzi-Biega National Park(UNESCO)
国立公園
危機遺産

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