ザンクト・ガレンの修道院は、スイス北東部のザンクト・ガレンにあるベネディクト会の修道院です。小さな庵から始まり、720年に修道院は設立。改修を経て18世紀にバロック様式の大聖堂となりました。
併設された付属図書館には、長きにわたる修道士たちの写本により中世の文化と知識が多く集まり、中世ヨーロッパの知の殿堂とも言われます。ザンクト・ガレンの修道院は、1983年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
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世界遺産登録の経緯
ザンクト・ガレンの修道院は、ドイツ国境に近いスイス北東部ザンクト・ガレン州の州都に位置し、人口165万人の大都市ザンクト・ガレンにある修道院です。
修道院は、アイルランドの修道士ガルスにより612年にザンクト・ガレンに建てられた庵と礼拝堂から始まり、720年に聖オトマールによってスイスで初めての修道院として建設されました。修道院と町の名前は修道士ガルスにちなんで付けられ、聖オトマールはガルスの跡を継ぎ文化や芸術を花開かせたのです。
ザンクト・ガレンの修道院は度重なる火災や宗教戦争を経て、1755年~1768年に改築され、後期バロック様式の大聖堂となりました。現存する大聖堂はバロック建築の傑作とも言われ、スイスバロック様式の重要なカテドラルの内装も有します。ザンクト・ガレンの修道院は現在でも街を象徴する建物であり、街の人々の憩いの場ともなっています。
8世紀~9世紀、修道院ではベネディクト会のルールに従い、修道士は日々読書や、聖書・古典の写本を行いました。写本のための工房も作られ、製本や装飾の技術を高めていきます。ベネディクト修道士が作成した写本は9~10世紀には300冊近くにまで達し、飾り文字なども施すようになっていきました。
8~11世紀にはアングロ・サクソンやアイルランド人僧侶達が多く訪れ写本を筆写するなど、中世ヨーロッパ文化の中心的存在にまでなりました。しかしながら16世紀にはプロテスタントの支配下に入り、衰退。1806年に修道院は閉鎖されたのです。
ザンクト・ガレンの修道院は、歴史上のある期間を通じて建築や技術の発展に関して人の重要な交流を示しました。また、人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、技術の集積を有していることから、1983年ユネスコの世界文化遺産に登録されました。
観光のポイント
ザンクト・ガレンの修道院の付属図書館
ザンクト・ガレンの修道院の付属図書館は、スイス最古であり世界最大級の図書館です。720年に修道院内に造られましたが、蔵書が増えたことから1767年にバロック様式に改築され修道院に併設されました。幅約10m、奥行き約29m、高さ7.4mとそれほど大規模ではありませんが、印刷技術が始まる前の貴重な写本が現在では2000冊を超え、蔵書は15万冊にもなります。
写本された知識は、キリスト教神学の研究だけではありませんでした。羊皮紙に制作された修道院平面図などの建築設計図、修道院経営の実態を表す資料、象牙細工などの初期中世美術、天文学や医学の知識などを残しています。今でも公立図書館としての機能を果たしており、1900年代以降のものは貸出も可能。建物としてもバロックやロココ様式の内装、フレスコ画が何とも見事で圧倒的な存在感を持つ図書館です。
国名 / エリア | スイス / ヨーロッパ |
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登録年 | 1983年 |
登録基準 | 文化遺産 (ii) (iv) |
備考 | ■関連サイト Abbey of St Gall(UNESCO) |