ケルクアンの古代カルタゴの町とその墓地遺跡

Punic Town of Kerkuane and its Necropolis

ケルクアンの古代カルタゴの町

チュニジア北東部の地中海沿岸に位置するケルクアンは、古代カルタゴ文明の都市遺跡として知られています。紀元前6世紀ごろ、フェニキア人によって建設されたこの町は、古代カルタゴ帝国の交易拠点として栄え、地中海貿易の重要な一角を担っていました。ケルクアンは長らく海上貿易の拠点であった一方で、紀元前3世紀の第三次ポエニ戦争後もローマによる破壊を免れたことから、カルタゴ文明の都市計画や社会構造を知る貴重な資料を残しています。

遺跡は、居住区、港湾、公共施設、墓地などで構成され、古代都市の典型的なレイアウトを示しています。特に特徴的なのは、都市の外縁部に設けられた墓地で、墓地遺跡からは当時の宗教観や葬送習慣が明らかになっています。墓地には土葬や石棺葬が行われ、出土品には土器、装飾品、貨幣などが含まれ都市住民の生活や信仰の様子を知る手がかりとなります。また、都市の建物跡からは、住居や工房、倉庫などの構造が確認され、カルタゴ社会の経済活動や都市計画の精緻さがうかがえます。

ケルクアン遺跡の価値は、単に建造物の保存状態だけでなく、古代カルタゴの都市文化を総合的に理解できる点にあります。フェニキア文化の影響を色濃く残しつつ、地中海交易を通じて独自の文化を形成した都市の姿は、当時の政治・経済・宗教の結びつきを研究する上で欠かせない資料です。1979年にはユネスコの世界遺産に登録され、その保存と研究が国際的に評価されています。

今日、ケルクアンは観光地としても注目され、遺跡を散策することで古代都市の空間感覚や生活の一端を体感できます。石造建築や街路の配置、墓地の規模などは、古代カルタゴの都市計画思想や社会構造を視覚的に理解する手がかりを提供します。地中海文明の一端を現代に伝えるケルクアン遺跡は、古代カルタゴの歴史と文化を学ぶ上で非常に貴重な遺産となっています。

国名 / エリア アフリカ / チュニジア
登録年 1985年 / 拡張年 1986年
登録基準 文化遺産 (iii)
備考 ■関連サイト
Punic Town of Kerkuane and its Necropolis(UNESCO)

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