チュニス旧市街(メディナ・チュニス)は、チュニジアの首都チュニスに位置する歴史的な都市中心部であり、1979年にユネスコの世界遺産に登録されました。 この旧市街は、北アフリカにおけるイスラム都市の典型的な例として評価されており、歴史的・文化的価値が非常に高い場所です。
メディナは、紀元前7世紀頃のフェニキア人による都市形成に起源を持ち、その後ローマ、アラブ、オスマン帝国など複数の文明の影響を受けて発展しました。特に7世紀以降のイスラム支配下で整備された都市構造は、狭く曲がりくねった路地、アーチ型の門、伝統的な住宅やモスク、ハンマーム(公衆浴場)など、古代から中世にかけての都市生活の面影を今に伝えています。
旧市街の中心にはエル・ゼイトゥーナ・モスクが位置しており、8世紀に建設されたこのモスクは、チュニジア最古の学問・宗教の拠点として知られています。周囲には、スーク(市場)や職人街、カラフルなタイルや木彫りの装飾が施された伝統的な家屋が広がっており、訪れる人々は当時の都市景観を体感することができます。また、古い門や城壁が旧市街を囲み、防衛都市としての歴史も色濃く残っています。

さらに、メディナにはイスラム建築の精巧な細工や装飾、オスマン様式の邸宅、ベドウィン文化や地中海文化の影響を受けた多彩な文化的要素が共存しています。これにより、チュニス旧市街は単なる観光名所ではなく、チュニジアの歴史・文化・宗教が交差する生きた文化遺産としての価値を持っています。
現代においても、旧市街は生活の場として機能しており、地元の人々の伝統的な生活様式と観光客向けの文化体験が融合しています。そのため、歴史的な建造物の保存と日常生活の調和が課題である一方、世界遺産としての価値を高める努力が続けられています。
総じて、チュニス旧市街は北アフリカにおけるイスラム文化の中心地として、歴史的、建築的、社会的に極めて重要な遺産であり、チュニジアの文化的アイデンティティを象徴する場所です。世界遺産として訪れる人々に、古代から現代に至る都市の歴史と文化を体感させる貴重な空間となっています。
