スクルの文化的景観(Skoura Cultural Landscape)は、モロッコ南部のウアルザザート近郊に広がるオアシス地帯で、ナツメヤシを中心としたパルメライ(オアシス林)と伝統的カスバ(砦的邸宅)、灌漑システムが一体となった人と自然の共生景観として知られています。ユネスコは、この地域の歴史的農業技術と建築文化の保存状態を評価し、世界遺産に登録しました。
スクルのオアシスは、アトラス山脈から流れるワジ(季節河川)を水源とし、ナツメヤシの高木の下にオリーブや果樹を配する多層植生が特徴です。これにより、乾燥地帯での農業が効率的に営まれ、古くから人々の生活と密接に結びついてきました。オアシス内には、17世紀以降の土壁造りのカスバが点在し、外敵から身を守る砦としての役割を果たすと同時に、居住空間や倉庫としても利用されてきました。有名なカスバ・アムリディルは保存状態が良く、モロッコ50ディルハム札にも描かれるほど象徴的な建築です。
灌漑には、地下水路「キッタラ(Khettara)」や用水路、堰などの伝統技術が活用され、乾燥地帯での持続可能な農業の知恵が今も息づいています。こうした農業・建築・水利・居住空間が一体となった景観は、単なる自然景観ではなく、人類が創り出した文化的景観としての価値を持ちます。
観光的には、オアシス散策やカスバ訪問、伝統農業の見学などが可能で、特にナツメヤシの緑と土壁の建築のコントラストは、訪れる者に独特の美を感じさせます。一方で、近代化や観光化、農業人口の減少などによって景観の均衡が脅かされる課題もあり、持続的な保全が求められています。
スクルの文化的景観は、自然環境・農業技術・伝統建築・地域社会が複合的に融合した、モロッコ南部を代表する文化遺産です。乾燥地帯の中に生まれた人々の知恵と暮らしの跡を感じられる貴重な場所であり、世界的にも高い文化的価値を誇ります。
| 国名 / エリア | アフリカ / ナイジェリア |
|---|---|
| 登録年 | 1999 |
| 登録基準 | 文化遺産 (iii) (v) (vi) |
| 備考 | ■関連サイト Sukur Cultural Landscape(UNESCO) |
