フェズの旧市街

Medina of Fez

概要

フェズの旧市街
medina of fez by James Merabi, on Flickr

モロッコ北部、首都ラバトから東へ約200kmのところに位置する都市フェズ。モロッコで最古のイスラム都市であり、数世紀 にもわたり宗教、文化、学問、商業の中心でした。

フェズの旧市街を囲む高い城壁と迷路のような路地は、敵の侵入を防ぐために造られました。
旧市街の中心には北アフリカ最大のモスクであるカラウィーン・モスクがあります。

「世界一の迷路の町」とも言われ、中世のイスラム都市の面影を残すフェズの旧市街の町並みは、まるで1000年前の世界にタイムスリップしたかのよう。
その歴史的、文化的価値の高さから1981年に文化遺産として、世界遺産に登録されました。

歴史

フェズの旧市街
Photo by Selina Bubendorfer on Unsplash

フェズの歴史は8世紀末、モロッコ初のイスラム王朝であるイドリス 朝の首都として建設されたことから始まります。建設にあたったのはイドリス1世で、その後も息子のイドリス2世に引き継がれ、さらに発展しました。

イドリス朝以後のイスラム王朝でも、フェズは王都とされ、13世紀のマリーン朝の時代には、モスクやマドラサ(イスラム神学校)が次々と建てられ、最盛期を迎えます。フェズは数世紀にもわたり西方イスラムの宗教、文化、学問、商業の中心地であり続けました。

20世紀の一時期、モロッコはフランスに占領され、その保護下に置かれます。その時、フランスによってフェズの旧市街に新たな建築物を建てることを禁じる法令が公布されたことは、景観維持の助けになりました。
現在でもフェズは、中世のイスラム都市がそのままの姿で残っています。

世界遺産登録の経緯

フェズの旧市街
medina of fez by Ralf Steinberger, on Flickr

フェズ旧市街が世界遺産に登録された理由の1つ目は8世紀末にイドリス朝が、モロッコの歴史上で初のイスラムの王都として建設されたことが、高く評価されたことがあげられます。モロッコのイスラム化はここから始まったので、モロッコの歴史上、とても重要な意味があります。

2つ目の理由は、フェズは、イドリス朝以降も数世紀にわたって作りあげられた都市であり、それが非常に良い状態で保存されていることがあげられます。モロッコの都市文化を代表する伝統的な建築形態や都市景観を目にすることができます。敵の侵入を防ぐために造られたフェズの旧市街は、高い城壁に囲まれ、迷路のような造りになっています。

3つ目はフェズが宗教、文化、学問、商業の中心地として発展し続け、それを今に伝える歴史や文化が残っていることがあげられます。その代表例が、旧市街の中心に位置する北アフリカ最大のモスクであるカラウィーン・モスク。フェズを建設したイドリス2世の墓であるマウラーイ・イドリス廟です。

また、伝統的な生活文化を伝えるものとして「タンネリ」というなめし革工場があります。皮をなめし、染料で皮に色付けをするという、今でも昔ながらの手法で皮製品が作られています。

見どころ

フェズの旧市街には、迷路のような町並みはもちろん、カラウィーン・モスクをはじめ、中世イスラム文化を伝えるさまざまな見どころがあります。

迷路のような街並み

迷路のような街並み
Photo by Carlos Ibáñez on Unsplash

まるで迷路ようだと言われる複雑なフェズの旧市街。このようになっているのは、主に以下の3つの理由があります。
1つ目の理由は、外敵からの侵入を防ぐため町を城壁で囲んだこと。2つ目は、商人達は限られたスペースの中で店を構え、商売をしなければならなかったこと。さらに3つ目は、内部を外から見られないように家屋が外壁で覆われていること。これは特に内部にいる女性が他人から見られないように配慮するためであり、イスラム建築の特徴です。

カラウィーン・モスク

カラウィーン・モスク
medina of fez by Sara Sune, on Flickr

カラウィーン・モスクは857年にイスラム教の女性が彼女の父を偲んで小さな礼拝堂を建てたのが始まりです。モロッコの歴代王朝によって増築され、壮大な建物となりました。現在のカラウィーン・モスクは約2万人を収容できる北アフリカ最大のモスクです。

モスク内には世界最古の大学の一つでもあるカラウィーン大学があります。イスラム法学をはじめ、言語学・自然科学・医学などを学ぶためアラブ諸国からの数多くの留学生がやってきました。
イスラム教徒以外の入場は禁じられていますが、入口から中の彫刻やタイルの見事な装飾を少しだけ見ることができます。

マウラーイ・イドリス廟

イスラム王朝の首都としてフェズをつくり上げたマウラーイ・イドリス2世の墓。現在も旧市街の中で最も神聖な場所であり、モロッコの中でも極めて重要な聖地です。モロッコ全土から多くの巡礼者が訪れています。

入り口付近は繊細で美しい装飾がほどこされていますが、イスラム教徒以外には公開されていません。外部からなら中を見ることが許可されています。

タンネリ

タンネリ
Photo by fotografu on Unsplash

モロッコと言えば革製品が有名ですが、その工場がタンネリです。タンネリとはフランス語で「なめし革工場」を意味します。
ここでは、今でも昔ながらの方法で、牛・羊・馬・らくだ等の皮がなめされ、さまざまな色の染料で色付けされた革製品が作られています。お土産屋の上から見学することができ、上から見るとタンネリの染料がまるでアートのよう。

フェズのタンネリはモロッコ最大規模を誇り、必見の観光スポットです。ここで作られた革製品はお土産としても人気です。


国名 / エリア アフリカ / モロッコ
登録年 1981
登録基準 文化遺産 (ii) (v)
備考 ■関連サイト
Medina of Fez(UNESCO)

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