紀伊山地の霊場と参詣道

Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range

紀伊山地の霊場と参詣道

紀伊山地の霊場と参詣道の概要

紀伊山地の霊場と参詣道

「紀伊山地の霊場と参詣道」は、日本の古都である奈良・京都の南に位置している紀伊山地に形成された「吉野・大峯(よしのおおみね)」、「熊野三山(くまのさんざん)」、「高野山(こうやさん)」の3つの山岳霊場と、それらの参詣道(さんけいみち)で構成される文化資産群です。

紀伊山地は標高1000~2000m級の山脈が縦横に並び、年間降水量が3000mmを超える多雨地帯。豊かな雨により育まれる森林景観は古くから「神の宿る場所」として崇められ、山や森、川や滝などの自然を神格化する日本古来の自然信仰が発展してきた場所でもあります。吉野・大峯は6箇所、熊野三山は7箇所、高野山は4箇所の寺社などを含む構成要素を有しています。

中国大陸から仏教や道教が伝えられたことで、紀伊山地は神仏習合(日本固有の神の信仰と仏教信仰を融合調和したもの)や修験道など信仰の聖地とされました。3つの霊場と、そこに至る参詣道により、日本各地から多くの参拝者が訪れています。このように自然環境から数多くの信仰形態が育まれ、それが今なお共存していることから、日本ではじめての文化的景観として認められました。

世界遺産に登録された理由

紀伊山地の霊場と参詣道

三つの霊場と参詣道は、千年以上にわたり多くの自然崇拝の信仰者を惹きつけ、日本人の文化的・精神的な面においての発展や交流に関して非常に重要な役割を果たしてきました。多様な文化的要素と自然の諸要素が一体の形となった霊山の規範例と位置付けることができ、アジア、太平洋地域を代表する霊山の一つとして極めて高い価値を有しています。このような霊場、参詣道、深遠な山岳景観によって文化的景観を形成している事例は他にありません。以上のような理由から、2004年に世界文化遺産に登録されました。

歴史

紀伊山地の霊場と参詣道

「紀伊山地」で形成された三つの霊場は、歴史的特徴がそれぞれ異なります。

「吉野・大峯」は修験道(しゅげんどう:山に籠もって修行することで、悟りを得ようとする宗教)の中心地として発展してきました。10世紀中頃には日本一の霊山(れいざん:神格化された山)として崇敬を集め、その名は中国にも伝わっていました。

「熊野三山」は自然崇拝を起源とする熊野信仰の中心地として発展してきました。11世紀に皇族・貴族が盛んに参詣しはじめ、15世紀後半には庶民が中心となり、16世紀後半には「熊野比丘尼(くまのびくに)」と呼ばれる女性布教者の活動によって大いに活気がありました。その賑わいの様子は、「蟻の熊野詣(ありのくまのもうで)」と言われるほどでした。

「高野山」は日本人によく知られる高僧である「空海」が唐からもたらした真言密教の山岳修行の道場として発展してきました。816年に道場として創建された「金剛峰寺(こんごうぶじ)」を中心とした霊場であり、空海に対する信仰の聖地となっています。

3つの霊場に対する信仰が盛んになるにつれ、参拝者や修行者が増加し、「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」、「熊野参詣道(くまのさんけいみち)」、「高野山町石道(こうやさんちょういしみち)」という参詣道が整備されました。中でも「熊野参詣道」は「熊野古道(くまのこどう)」とも呼ばれ、道中の大自然に加えて、歴史的に皇族・貴族→庶民→現代人へと歩き繋がれた感慨深い道です。

紀伊山地の霊場と参詣道のポイント

範囲は和歌山県、三重県、奈良県にまたがるため非常に広く、目的地によってアクセス方法などが異なります。「紀伊山地の霊場と参詣道」を訪れる際はしっかりと下調べをしましょう。

「熊野三山」、「熊野古道」の自然崇拝

紀伊山地の霊場と参詣道

「紀伊山地の霊場と参詣道」では自然に神が降臨するとされる自然崇拝が特徴的ですが、構成資産の中でも「熊野三山」には多くの名スポットがあります。「熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)」の「ゴトビキ岩」や、熊野古道沿いの「花の窟(はなのいわや)」、「那智(なち)原始林」、「仏経嶽(ぶっきょうがだけ)原始林」、「那智大滝(なちのおおたき)」などは自然信仰の典型的な事例となります。大自然の力を感じたい人はぜひ訪れておきたい場所です。

天空の聖地「高野山」

紀伊山地の霊場と参詣道

高野山では標高800m以上に117もの寺院が建てられています。このような高い標高に寺院が立ち並ぶといった事例は他に見られないことから、高野山は「天空の聖地」、「天空の宗教都市」と呼ばれるようになりました。1200年の歴史をもつ霊山であることと相まって、非常に珍しい宗教地域となっています。

修験道の中心地「大峯奥駈道」

紀伊山地の霊場と参詣道

「吉野・大峯」は修験道の中心地として発展してきたため、その参詣道である「大峯奥駈道」は他の山道と比べて厳しい道のりとなります。約170 km、標高1200~1900mの傾斜が急で険しい山岳が連なる山脈の尾根を、沿うようにして歩き続けるという極めて過酷な精神修行の場となります。体力に自信があり、「修行」という意味で訪れたい人は挑戦してみましょう。

国名 / エリア アジア / 日本
登録年 2004年
登録基準 文化遺産 (ii) (iii) (iv) (vi)
備考 ■関連サイト
Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range(UNESCO)

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