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セラード保護地域群の概要
「セラード保護地域群:ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園」は、ブラジルのゴイアス州北部にある国立公園です。ヴェアデイロス平原国立公園、エマス国立公園の2つの国立公園が、2001年に「セラード保護地域群」として世界遺産に登録されました。
世界遺産登録エリアのその広さは日本の面積の5倍にものぼり、広大な平原地帯に多種多様な生態系を持っています。
世界遺産登録の経緯
ヴェアデイロス平原国立公園は海抜約600m~1650mの高所にあり、地球上最古の平原ともいわれています。その土地では、何度も繰り返す地球の気候変動の度に、多くの動物たちが集まってきた場所です。
現在でも、多種多様な生態系を持つことが、世界遺産として評価されています。
エマス国立公園は、セラード特有の生態系が特徴です。絶滅危惧種であるオオアリクイが棲んでいます。オオアリクイは、2500万個ものアリ塚を作っています。アリ塚は、高さ2m以上、外周も2m72cmもあります。その表面に無数の穴があり、中にはシロアリが隠れているのです。
乾季には枯れ草で覆われるというセラードで、シロアリは枯れ草をエサに変えて繁殖を繰り返し、2500万個ものアリ塚を作ってきました。
セラード保護地域群の2つの国立公園は、世界中で最も古く、そして多種多様な熱帯生態系が形成されています。その理由は数千年にもわたる地球の気候変動時にいくつもの種類の動物がこの土地に逃げ込んだからです。
将来予想される気候変時においても、生物多様性を保つうえで、重要な避難場所ともなるとされ、その点についても世界遺産として注目を集めています。
また、アルマジロ、タテガミオオカミ、アメリカダチョウ、カピパラ、サルなど、2つの公園に生息している哺乳類は70種以上、鳥類は300種以上のものぼります。
このように、非常に貴重な動物と、この地域でしか見ることができない植物とが相まみれていることが、世界遺産登録の理由です。
構成資産
ヴェアデイロス平原国立公園
ゴイアス州にある国立公園で、約1万8000万年前に形成された平原です。1961年1月11日に当時のジュセリーノ・クビチェック大統領の署名により、国立公園に指定されました。
エマス国立公園
「エマス」とは、ポルトガル語でレア(アメリカ人・レア)という意味です。アメリカ・レアとは、南米大陸に生息する大型の陸鳥にことで、ギリシャ神話の大地の女神レアーに由来するとされます。
この国立公園では、セラードの典型的な生態系を観察することができます。
歴史
高原にあるヴェアデイロス平原国立公園は、16億年前に植物の種がここから川に流れ、この地からアマゾンの熱帯林が生まれたといわれています。
灌木地帯に位置するエマス国立公園は、ダチョウに似た大きな鳥であるエマやツカーノ・アスーという鳥類をはじめ、絶滅危惧種である動物が多く生息している地域です。
また、ヴェアデイロス平原国立公園は日本とも深いつながりがあります。この平原は地球で最も古い岩石形成帯の一つであるとともに、たくさんの水晶が産出されてきました。そしてこの水晶が、イギリスや日本へも産業用として輸出されてきたのです。
このように、水晶を含むほどこの地帯は肥沃な大地であり、現在は牧草地としても使用されています。
特徴
南米大陸の10カ国と国境を接し、南米最大の国土をほこるブラジルに位置する、セラード保護地域群は、1年のうち9カ月間も雨が降らないという、過酷な環境化に置かれています。
夏には気温が40℃を超えることあるため、イネ科など低い木の植物が多く、高い木がほとんどないのが特徴です。そのような視界をさえぎるものがないからこそ、見える、小高い岩山からは絶景は見事のひとことです。
岩山に張り付く植物、高い崖から勢いよく流れる滝を、遠くに眺めることができます。
必見ポイント
セラード
セラードは、雨季の時期になると落雷が多発し、さらにその時の草原はまだカラカラに乾いているため、雷が落ちると簡単に火事が起きてしまう地帯です。そのため、この地帯に生息する植物は、火事から身を守るために、独自の進化を遂げました。
ヴェアデイロス平原国立公園
この土地の地質は水晶を含んでいるため、公園内には水晶の鉱山へのハッキングツアーが整備されています。
宿泊施設も用意されており、初めて訪れる人も安心してゆっくりと観光を楽しむことができます。
エマス国立公園
エマス国立公園の見どころといえば、なんといっても2500万もの土の塔でしょう。これはシロアリの巣であるアリ塚です。
100万から200万匹ものシロアリが4、5年をかけて作ります。このアリ塚は雨季の始めの1ヶ月程度だけ、夜になると緑の光が点滅します。
その光は、シロアリを誘き寄せる昆虫であるヒカリコメツキの幼虫です。幼虫が光ることで、シロアリが誘き寄せられ、近づいたところをヒカリコメツキの幼虫がシロアリを食べるのです。
この光は、学術的にも貴重で、医学的にがん細胞を光らせて見分ける研究が進んでいます。
国名 / エリア | アメリカ大陸 / ブラジル |
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登録年 | 2001 |
登録基準 | 自然遺産 (ix) (x) |
備考 | ■関連サイト Cerrado Protected Areas: Chapada dos Veadeiros and Emas National Parks(UNESCO) |