北京と瀋陽の明・清王朝皇宮

Imperial Palaces of the Ming and Qing Dynasties in Beijing and Shenyang

北京と瀋陽の明・清王朝皇宮
Photo by Ling Tang on Unsplash

概要

北京と瀋陽の明・清王朝皇宮は、中国(中華人民共和国)にある世界遺産です。
1987年に登録された北京にある故宮(こきゅう)博物院と、2004年に追加登録された瀋陽(しんよう)の瀋陽故宮からなります。

北京の故宮博物院は、中国の代表的な美術館です。 同じ名称のものが台湾・台北にもありますが、もとは一つで、1925年10月10日、北京の故宮、紫禁城(しきんじょう)の後半部につくられました。故宮とは、明と清の時代の延べ24 代にわたる皇帝や皇后の住居があったことを意味します。

一方、2004年に登録された瀋陽故宮は、清の前身の時代にあたる後金(こうきん)時の1625年に着工し、2代皇帝ホンタイジ(太宗)の時代の1636年に完成した宮殿です。清朝3代皇帝・順治帝が皇居を北京の紫禁城に移すまで皇宮とされ、その後も清王朝の離宮(皇居以外にに設けられた皇室の宮殿)としても利用されていました。

北京の故宮博物院

外朝と内延という2つの領域に分けられた故宮は、皇帝が政務を行なう場所と、皇帝とその一族が生活する場所の「前朝後寝」という中国の古くからの伝統様式に基づいて設計されています。

映画「ラストエンペラー」の舞台となった故宮博物院は、現存する中国最大の木造建築物という価値だけではなく、世界最大の広場・世界最大の宮殿という、価値のもと世界遺産として登録されました。

瀋陽故宮

遼寧(りょうねい)省瀋陽市にある瀋陽故宮は北京にある故宮の12分の1ほどの大きさしかありませんが、それでも300以上の部屋を持つ70以上の建物をもつ建築物です。その建築には、遊牧民族の特色が表れています。

敷地内は、東路、西路の3つに分かれており、東路はそのなかでも最も歴史が古く、清の初代皇帝ヌルハチの時代から利用されていました。中路は、清の2代皇帝であるホンタイジ時代になって使わるようになり、ここには満州族の伝統である、神を拝むたの柱が建っています。

西路には、乾隆帝によって編纂された中国最大の漢籍叢書である四庫全書が収められていました。乾隆帝は増築を行いましたが、その時代にはすでに中国中央部の文化が浸透していたため、その建築様式は東路、中路のものと比べると大きく異なります。

このように、東路、中路、西路と立てられた時代とともに遊牧民族や漢民族の文化の融合が見事に表れていることが、世界遺産登録の背景です。

北京と瀋陽の明・清王朝高宮の歴史

北京の故宮博物院

明と清朝時代の王宮として使用された北京の故宮博物院は、明の永楽帝が南京から北京へと都を移したあと、1420年に建造されました。

1694年の李自成の乱の際も一時は消失するも、のちの清の時代にまた再建されました。その後は長く清の皇帝の居住地として使われましたが、1911年に起きた辛亥革命により清の王朝が倒れ、1924年の北京政変によって宣統帝薄儀が退去したあとは、故宮と呼ばれました。

瀋陽故宮

17世紀、中国北方の遊牧民族である満州族は、清王朝の前身の後金王朝を建国、その後に勢力を拡大しました。初代のヌルハ チはまず瀋陽を都と定め、継いだホンタイジが清と国号とし皇帝となります。そしてこの2人が居住したのが瀋陽故宮です。

清の影響力が中国全土に拡大すると、北京へと都は変わりますが、瀋陽は副首都として地位を保ち、瀋陽故宮も副都故宮となりました。瀋陽故宮は満州民族が影響力を拡大するとともに形作たれた、漢民族、蒙古、チベットなどの他民族との融合の証でもあるのです。

必見ポイント

北京の故宮博物院(紫禁城)

紫禁城
紫禁城

北京故宮または紫禁城とも呼ばれます。故宮とは、中国語で「古い宮殿」を意味する言葉で、もともとは「紫禁城」と呼ばれていました。

紫禁城の「紫」は、古代中国の天文学において天帝である最高神の位置が紫微垣(しびえん)とされたことによる名称です。そして、「禁城」とは、一般庶民が自由に立ち入ることを禁止された城という意味です。

明の時代の1406年から14年もの歳月をかけて建造され、その後、500年にもわたる中国政治の中心地でもありました。

南北の長さは961m、東西753メートルで総面積は72万㎡ 、城壁の高さ10m、幅52mの濠に囲まれています。6つの門があり、東に東華門、西に西華門、北に玄武門と端門と午門と、そして南には有名な天安門があります。

第二次世界大戦とその後の国共内戦のときに中華民国政府により宝物の一部が台湾へと運ばれ、それらを展示しているのが、現在の台北の國立故宮博物院です。

北京の故宮博物院も1925年から博物館となっており、連日多くの観光客が訪れるとともに、たくさんの野良ネコも住み着いています。

その他、国家行事や式典、政治が行われていました太和殿、中和殿、保和殿の前三殿の3つの主な建物や、後三宮、紫禁城最大の花園で妃たちが住んでいた御花園、かつては軍寿宮と呼ばれ、皇帝に先立たれた妃が住んでいた皇極殿などが観光スポットとしてあります。

瀋陽故宮

瀋陽故宮
瀋陽故宮

東北部、遼寧(りょうねい)省の省都にある瀋陽故宮には、90もの建築物と20の庭園がります。都が北京に移ってからは、離宮として歴代皇帝が行幸していました。

現在は、瀋陽故宮博物院として公開されており。その中には多くの装飾品や武具などが展示されています。
周辺にはヌルハチの墓「清東陵(福涼)」やホンタイジの墓「清北陵(昭陵)」があり、2004年に「明・清朝の皇帝陵墓群」として、世界文化遺産に登録されました。

国名 / エリア アジア / 中華人民共和国
登録年 1987年/2004年範囲拡大
登録基準 文化遺産 (i) (ii) (iii) (iv)
備考 ■関連サイト
Imperial Palaces of the Ming and Qing Dynasties in Beijing and Shenyang(UNESCO)

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