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概要
古代メソポタミア文明を代表する都市「バビロン」は、現在のイラク中部に位置し、2019年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。バビロンは紀元前18世紀頃から栄え、特に新バビロニア王国のネブカドネザル2世の時代(紀元前6世紀)に最盛期を迎えました。この時代には、有名な「バビロンの空中庭園」(世界七不思議の一つとされる)やイシュタル門、大規模な城壁やジッグラト(聖塔)などが建設され、都市は壮麗を極めました。
バビロンは宗教、科学、芸術、法律の分野で高度な文明を築き、世界最古級の法典である「ハンムラビ法典」が生まれた場所としても知られています。また、旧約聖書や古代ギリシャ文献にも登場するなど、歴史的・文化的影響は極めて大きいものがあります。
長らく風化や人為的破壊、政治的混乱の影響を受けてきたものの、現在では保存・修復活動が進められ、世界遺産としての保護体制が整えられつつあります。バビロンは、古代都市文明の発展と人類の文化的遺産の豊かさを今に伝える、かけがえのない歴史的遺産です。
ライオンのレリーフ

バビロンのライオンのレリーフは、新バビロニア時代(紀元前7~6世紀)に制作された、バビロンを象徴する装飾芸術のひとつで、当時の都市の壮麗さと宗教的・政治的象徴性を伝える貴重な文化財です。
このレリーフは、主にネブカドネザル2世の治世に整備された「行列通り(プロセッション・ウェイ)」と呼ばれる神殿へ続く参道の壁面を飾っていたもので、色鮮やかな釉薬タイル(彩釉レンガ)によって制作されています。
特徴
モチーフ:ライオンが歩く姿を横から捉えた構図で、口を開けて咆哮するようなポーズが多く見られます。ライオンは筋肉質に表現され、動きや力強さが際立っています。
象徴性:ライオンはバビロニアの守護神イシュタルの聖獣であり、王権や戦い、保護の象徴でもあります。このため、都市の威厳や神聖さを強調する役割を果たしていました。
技法:焼成されたタイルの上に色釉が施され、精緻な線と色彩で構成されており、古代中東の高度な陶芸技術と美的感覚を示しています。
文化的意義
バビロンのライオンのレリーフは、ただの装飾ではなく、都市の力と神々の加護を象徴する宗教的・政治的プロパガンダの手段でもありました。また、色彩豊かな釉薬レンガという技術の面でも古代美術史における重要な遺産とされています。
現在、このレリーフの一部は、ベルリンのペルガモン博物館など世界各地の博物館にも所蔵されています。