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概要
ウィランドラ湖群地域はオーストラリア・ニューサウスウェールズ州の南西の砂漠地帯に広がる4万年前の湖跡です。新生代更新生の氷河期、この地域には豊かな湖があり、湖畔では人類の祖先であるホモ・サピエンスが生活していたと考えられています。
約37万haにも及ぶ広大な砂丘が33㎞にも渡る砂丘は、かつて湖があったとは思えないほどに荒涼としており、不思議な砂の世界が広がっています。このように太古の地球の記憶を呼びおこさせる文化と自然の複合遺産として、1981年に世界遺産に登録されました。
元来、湖が点在していたこの地域は人類の生活拠点であったことが、多くの人類や動物の化石発掘からうかがえます。1968年、約2万6000年前に火葬された女性の人骨が出土し、人類最古の火葬場として注目されました。これらは人類の起源を感じさせると同時に当時オーストラリア大陸に人類がいたことを裏付ける証拠となりました。
その後の2003年には2万年前の人類の足跡が大量に発見され、これは世界を驚かせこととなったと同時に、考古学研究の地としても注目を浴びるようになったのです。
現在のこの地域の一部はマンゴ国立公園になっており、ここでは観光ツアーが行われると同時に多くの動物が生息しております。
歴史
その昔豊かな水が湛える湖が点在していたこの辺り一帯は、緑が広がり、様々な生き物たちが生息し、食料の確保も容易でした。そのため人類もこの地に目をつけ、豊かな水の恩恵にあずかろうとやってきたのでした。
ホモ・サピエンスの人骨やアボリジニの遺骨が多く発見され、また古代の石器・貝塚なども多数見つかっていることがその証拠です。しかし約1万5000年前、気候変動がオーストラリア内陸部を襲い、豊かな水は蒸発し、乾燥化していきました。
現在の地盤は元来湖であったところが干上がり、砂漠化した土地です。乾燥して風化した地面や岩などが削られて砂となり、その昔湖であった場所に堆積することで砂丘となっています。また三日月型の壁のような砂丘は「ウォールオブチャイナ(万里の長城)」と呼ばれ、これは湖の底にできていたしわが長い年月をかけて湖の水が干上がったことで地上に現れたものです。 これらのことから地球環境の変化により人や動物の生活が激変してしまうという自然の恐ろしさを長い歴史を通して実感できます。
世界遺産登録の経緯
未だ謎が多く残る人類の歴史を知るにおいて、ウィランドラ湖群地域は現生人類の化石や、その後発見された人類の足跡などが良好な状態で保存され、現代に受け継がれています。このことから考古学上、最も貴重な遺跡であるとされ世界遺産に登録されました。
この地域は今後の考古学の発展の鍵となるでしょう。人類の文化に加え、自然の壮大さを感じることができる自然と文化が融合された地域であることも、世界遺産登録へと繋がった理由です。
必見ポイント
ウォールオブチャイナ(万里の長城)
湖の砂と粘土層の浸食による砂丘にそびえ立つ壁はアボリジニの聖地ともなっています。 異彩なる威厳を放ち、正に万里の長城と言えるに相応しいと言えるでしょう。
所々で見受けられる化石
砂漠地帯を歩いていると所々で化石が見受けられ、太古の人類の生活を垣間(かいま)見ることができます。人の骨や足跡の他にはエミュー(オーストラリアの国鳥)やカンガルーの足跡、やりが刺さった跡なども残っています。