屋久島

Yakushima

屋久島

屋久島の概要

屋久島は、日本の鹿児島県の大隅半島佐多岬の南南西約60kmの海上にある世界遺産です。

九州地方で一番高い山である宮之浦岳(標高1936m)が位置しするとともに豊かな自然が残されており、「洋上のアルプス」とも形容されます。

世界遺産登録の経緯

1992年3月13日に世界遺産条約の国会提出が閣議決定され、6月30日に条約受諾書がユネスコへと送付、10月1日に世界遺産委員会へと推薦されました。

そして、翌年の1993年12月11日、コロンビアのカルタヘナで開催された世界遺産委員会で、姫路城・法隆寺・白神山地とともに日本で初めての登録として、世界遺産に登録されました。

当時、ユネスコ遺産センターのドロステ所長は、「自然資産としての屋久島の価値は、多くの人たちが暮らしながら、すぐれた自然遺産が残されている」と指摘しました。

構成資産

約500㎢の屋久島のうち、20%ほどの約1万747haが世界遺産として登録されています。

登録されているエリアは、九州最高峰の宮乃浦岳をはじめとする、愛子岳、国割岳、モッチョム岳などの2000m級の山々や、西部森林道付近が含まれます。

とくに、この西部林道は、屋久島の世界遺産エリアに入ることのできる唯一の車道です。

歴史

屋久島は、約1400万年前の新世代の造山活動により海面に花崗岩が隆起し、海上にその姿をあらわしたとされます。

黒潮による暖かい空気が山にぶつかり、大量の雨が降ることによって、多様な広葉樹とツガ、あるいは屋久杉などの針葉樹が混生する珍しい森林地帯ができました。

島の面積の90%が森林で覆われ、ヤクシマダケ(ヤクザサ)やヤクシマシャクナゲなどの多様な植物、ヤクシカやヤクシマザル(ヤクザル)などの哺乳類、ヤクシマアカコッコやヤネコマドリ(ヤクコマドリ)などの固有の鳥類が生息しています。

屋久杉の伐採

屋久島といえば屋久杉を思い浮かべますが、屋久杉はもともとご神木としてあがめられ、伐採されることはありませんでした。

しかし、16世紀ごろから寺院などの建築のために伐採され始め。江戸時代には伐採された杉を、屋根を覆う平木(ひらぎ)に加工され年貢として幕府に収められるようになり、実に森の50%~70%が伐採されました。

さらに明治に入り、森の大部分が国有化かれると本格的な森林開発が始まり。昭和30年代からの高度経済成長の時代になるとさらに大規模な伐採がなされました。

屋久杉の保護活動

一方で、屋久杉の保護の動きも始まります。原生林が大正13(1924)年に天然記念物に指定されたことを皮切りに、昭和29(1954)年に戦後の文化剤保護法で特別天然記念物に指定され、昭和39(1964)年には国立公園に編入されました。

ただ、その間も大規模な伐採は行われていきましたが、屋久島の住民が昭和46(1971)年に伐採の中止を求めて「屋久島を守る会」を結成し、あるいは住民自らが「林地活用計画」がまとめるなどさまざまな保護活動が展開され、1980年代になりようやく一切の伐採が禁止されました。

昭和56(1981)年には屋久島がユネスコの「人間と生物圏計画」の生物圏保護区(ユネスコエコパーク)に登録され、このことが世界遺産登録へとつながったのです。

特徴

屋久島はその中心部に九州最高峰の宮之浦岳をはじめとする山々がそびえたち、また世界的には動植物の移行帯に位置する湿潤気候化の高い山として、生物・地理学的に特殊な環境下に置かれています。

さらに「1か月間に35日雨が降る」といわれるほど多く雨が降ることから、樹齢が数千年の屋久杉をはじめとする、特殊な森林地帯が築かれました。

海岸付近には、ガジュマルやアコウなどの亜熱帯植物や、タブ、シイ、カシなどの暖帯、モミ、ヤマグルマなどの温帯、さらにヤクザサ、シャクナゲなどの亜高山帯にいたる植生の垂直分布が髄所にみられます。

また、この地形がおりなす気候は、実に亜熱帯から亜寒帯までが含まれ、九州から北海道に及ぶ気候がこの屋久島1つで見られることができるのです。

この島に、日本の植物種の7割以上に及ぶ1500種もの植物種がひしめき、さらに世界で屋久島だけに自生する遺存固有の植物が約40種、屋久島を南限とする植物が約140種、北限とする植物が約20種も見られ、その固有の生態系は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれます。

屋久島憲法

1921年の5月には、「屋久島国有林経営の大綱」(屋久島憲法)が発表されました。それに基づき、国は屋久島の国有林4万兆林のうち7000兆林を委託林として島民に提供したほか、島のインフラを整備するなどの事業を開始しました。

2021年は、この屋久島憲法100周年にあたり、今後の屋久島のあり方を検討するシンポジウムが開催される予定です。

見どころ

屋久杉

屋久杉とは、屋久島に生息する樹齢1000年以上のスギのことをいいます。古来より神木とみなされてきました。屋久杉の中には全国的に有名なものが多く、毎年多くの観光客が訪れます。

縄文杉

1966年5月に発見されました。高さ30m、幹周16mの屋久島を代表する屋久杉です。中心が空洞であり、その内部を採取して測定された結果、樹齢は2170年でした。

大王杉

3000年もの推定樹齢をもつ屋久杉です。縄文杉が見つかるまでは、最大の屋久杉でした。そのため、「大王」という名前が付けられています。

ウィルソン株

ウィルソン株
Photo by Wren Chai on Unsplash

ウィルソン株は、300年ほど前に伐採された屋久杉の切り株です。それでも高さ42m、幹週13.8mの大きさがあります。

大正時代にウィルソン博士が紹介したことにより、この名前が付けられました。

夫婦杉

3mほど離れた2本の屋久杉が、10mの高さの位置でつながっているため、この名前が付けられました。この高さで枝がつながることは、とても珍しいです。

ヤクシカ

ヤクシカ
Photo by Marek Piwnicki on Unsplash

ニホンジカの亜種のひとつで、鹿児島県の屋久島と沖永良部島のみ生息します。体は、成長しても30〜40kgほどしかならず、小さいです。

古来より屋久島では、「山岳に神々が宿る」と信じられており、ほかにも「神々が鹿に乗って現れる」「鹿に森を見回りさせている」などのさまざまな伝説があり、神々の使いとして大切にされてきました。

ヤクザル

屋久島にだけ生息するニホンザルの亜種です。他の地域に住むニホンザルと比べると体は小さく、ずんぐりとした体型です。

屋久島全体で、5,000〜10,000頭ほどが生息していると言われ、トレッキングなどに参加するとかなりの確率で見ることができます。

ウミガメ

屋久島では、とくにアカウミガメとアオウミガメの産卵が確認されています。屋久島の中でも、いなか浜への上陸が最も多く、ピークが6月中旬〜7月中旬です。

1時間の産卵時間で、約100個の卵を産み、砂の中で太陽と地熱により温められて、60日ほどで孵化します。

国名 / エリア アジア / 日本
登録年 1993
登録基準 自然遺産 (vii)
備考 ■関連サイト
Yakushima(UNESCO)

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です