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概要
シミエン国立公園は、壮大な景観と様々な動植物の生息域が評価され1978年にガラパゴス諸島などと同時に、世界ではじめて自然資産に登録されました。
エチオピア北部のゴンダール州に広がる国立公園で、アフリカ大陸を縦断する大地溝帯の一角にある山岳地帯です。3000mを超える山々が連なる景観から「アフリカの天井」と呼ばれ、厳しい自然環境のなかで独自に進化した動植物が数多く生息しています。
特徴
標高4620mのラス・ダシェン山を筆頭に、3000m~4000m級の山々が連なる壮大な景観が大きな特徴です。高さ1000mの断崖絶壁が続く独特な地形は、約2500年前の地殻変動や火山活動、雨風の浸食で形成されました。昼夜の寒暖差が夏と冬ほどもある山岳地帯には、ワリアアイベックスをはじめとする珍しい動物や高山植物が生息しています。
厳しい自然環境でありながら農耕や放牧も2000年前から現在に至るまで営まれています。
しかし農地や放牧地の拡大、周辺人口の増加などにより自然環境が破壊されたことで、1996年には遺産の価値が損なわれる危機にあるとされ、「危機遺産リスト」に登録されてしまいました。
ですが農地の縮小や移住、放牧の管理計画など様々な対策が施され、2017年には公園の保全が改善されたことで危機遺産リストから削除されました。
出会いたい動物たち
ゲラダヒヒ
体長約50~70cmほどの「ゲラダヒヒ」は公園内のあちこちで見ることができますが、世界的にはエチオピア高原にしか生息していない珍しいサルの仲間です。知能が高いことが特徴で、約30種類の言語を持ち、ヒトの声に似た鳴き声や表情などでコミュニケーションをとっていると考えられています。
争うことを避ける習性のあるゲラダヒヒは平和主義であることも大きな特徴です。
サルの中では珍しく草だけを食べて暮らし、縄張り争いでは犬歯を剥き出しにして強さをアピールしますが、実際に戦うようなことはありません。
ワリアアイベックス
標高2500m~4500mの草原に生息する「ワリアアイベックス」は、ラス・ダシェン山を含む山岳地帯が国立公園に指定されるきっかけとなった絶滅危惧種に指定されているヤギの仲間です。
アルプス山脈などに生息するアイベックス種と同じ系統なので、かつてヨーロッパ大陸とアフリカ大陸が地続きで繋がっていたときに、エチオピアへ渡ってきたと考えられています。