マトボの丘群(Matobo Hills)は、ジンバブエ南西部に広がる花崗岩の丘陵地帯で、2003年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この地域は、丸みを帯びた巨岩が連なる独特の景観が特徴で、古くから人々に神聖視され、歴史的・文化的価値と自然の美しさを兼ね備えた場所として知られています。丘陵地帯は、野生動物の豊かな生息地でもあり、特にサバンナや低木林の生態系が保存されていることから、文化遺産と自然遺産の両方の価値を有しています。
マトボの丘群は、数千年前から先史時代の人々が居住し、岩の洞窟や巨岩の間に壁画を残した場所として知られています。これらの岩絵は、狩猟や動物、宗教儀礼を描いたものが多く、先住民の文化や信仰を理解する上で貴重な資料です。特に、サン族(ブッシュマン)の壁画は保存状態が良く、描かれた動物や象徴的なモチーフから、古代の生活様式や精神世界を読み取ることができます。
また、マトボの丘群は歴史的・政治的な重要性も持っています。19世紀末から20世紀初頭にかけて、この地域は白人入植者と先住民の抵抗の舞台となり、シェーン・ノートンなどの歴史的指導者の拠点や墳墓も点在しています。丘陵地帯の巨岩や洞窟は、戦略的な防衛拠点や避難場所として利用されたことも知られています。さらに、丘の一部には伝統的な儀礼や先祖崇拝の場が今も残っており、地域社会にとって精神的な象徴となっています。
自然環境の面では、マトボの丘群は生物多様性の宝庫であり、チーター、ヒョウ、ゾウ、サイなど多くの哺乳類が生息するほか、独自の植物群落も確認されています。丘陵地帯の石灰岩や花崗岩の地形は、水を貯める天然の窪地や洞窟を形成し、野生動物にとって貴重な水源や避難場所として機能しています。このため、マトボの丘群は自然保護と文化遺産保護が両立するユニークな地域として評価されています。
総じて、マトボの丘群は、先史時代の岩絵、歴史的な遺構、独特な地形、豊かな生態系を兼ね備えた総合的な文化・自然遺産です。岩の間に広がる丘陵地帯は、訪れる人々に壮大な景観と古代からの文化的連続性を感じさせる場所であり、ジンバブエの歴史と自然の価値を象徴する存在として、国内外から高く評価されています。
| 国名 / エリア | アフリカ / ジンバブエ |
|---|---|
| 登録年 | 2003年 |
| 登録基準 | 文化遺産 (iii) (v) (vi) |
| 備考 | ■関連サイト Matobo Hills(UNESCO) |
