ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸

Giant's Causeway and Causeway Coast

概要

ジャイアンツ・コーズウェー
Giant’s Causeway by Sean MacEntee, on Flickr

ジャインアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸は、イギリスの北アイルランドの北部アントリム州ブッシュミルズに位置する海岸線で、1986年に世界遺産に登録されました。

5000万〜6000万年前の火山活動による溶岩により作られた奇妙な形の岩が、8kmに及び延々と連なる光景が、実に不思議でもあり、壮大でもあります。

ジャイアンツ・コーズウェーとは「巨人の石道」という意味です。火山岩の一種である玄武岩が作り出した、おもに六角形の石が、高さは大きいもので12m、大きさは40cmから50cmまで、4万本ほどあります。

歴史

およそ6000万年前に起こった地殻変動により、この場所に膨大なマグマが流出しました。そして、次第にその溶岩の台地に堆積物の層ができ、約1万5000年前になると今度は氷河に覆われます。 その後、長い年月をかけて氷河が大地を削り、古い溶岩台地の地肌が露出した姿が、現在のこのジャイアンツ・コーズウェーです。

「巨人の石道」とは、ケルト神話に出てくるフィン・マックールという巨人が、これらの石柱を作ったという伝説に由来します。

彼が石道を作った理由には諸説あり、対岸のスコットランドに住む巨人のところに戦いに行くために作ったとか、スコットランド北西のヘブリディーズ諸島に住む巨人の女性に恋をし、彼女がアイルランドに渡れるようにするためだとか、さまざまな説が語られています。

そのため、高さ12mの石柱が整然と並ぶ石柱群は、「巨人のオルガン」や、ブーツのような形に侵食された「巨人のブーツ」など、巨人の伝説にちなんで名付けられました。

歴史的には、1692年に司教により初めて発見され、その後、アイルランド・ダブリンに住む芸術家スザンナ・ドルリーが水彩画に描いたり、1765年にはフランスの百科全書の見出し語にも登場するなど、古くからその名を歴史に刻んできました。

一帯は19世紀以降、路面電車のジャイアンツ・コーズウェー鉄道が開通した後、観光地として人気となり、観光地としての歴史も古いです。

世界遺産登録の経緯

全長8kmに及ぶ巨大な石柱群は、およそ6000万年前の地殻変動により噴出した大量のマグマが、長い年月をかけて固まって形作られたものです。それはつまり、地球の成り立ちを物語るものと言ってもよいでしょう。

ただ、火山活動の影響で石柱が形成されることも、それにより奇妙な石の形が見られるのも、世界的にみればさほど珍しいことではありません。

しかし、ジャイアンツ・コーズウェーが世界遺産として登録された背景には、正六角形の石の形状が非常に整って美しいこと、ぴったりと敷き詰めたように並んでいること、そしてその上を歩くこともでき、あるいは飛び跳ねて遊ぶこともできるほど、唯一無二の光景を見ることができるからです。

とくに石の上を歩くことができるのは、世界的にも珍しいことです。これほど美しい正六角形の石柱がつくられた理由としては、氷河期からの浸食や風化によるものです。そして数100万年にわたり自然の風雨にさらされた結果として見ることができるのが、今の石柱群の姿なのです。

世界自然遺産として登録だけではなく、1960年以降はイギリス最大の自然保護団体によりナショナル・トラストにより保護されるなど、古くからイギリス国内で愛され、「イギリスの七不思議」とも評されたりします。

2005年には、「ラジオ・タイムズ」誌の読者投票により、「イギリスの最も偉大な自然の驚異」ランキングで第4位に選出されるなど、知名度も抜群です。1987年からは、北アイルランド環境省により自然保護区にも指定されました。

石柱群だけでなく、海岸には多くの貴重な動植物も確認されており、約80種類にものぼる鳥も見つかっています。そのような豊かな自然環境が見られることとも世界遺産登録の理由として挙げられます。

必見ポイント

巨人の道

巨人の道
Giant’s Causeway by Waheed Mahmud Khaled, on Flickr

この場所では、六角形の石柱群が海へ向かって広がる姿を見ることができます。

ジャイアンツ・オルガン

ジャイアンツ・オルガン
Giant’s Causeway by Waheed Mahmud Khaled, on Flickr

12mの高さがある切り立った石柱群です。形がパイプオルガンのパイプに似ていることから、このように名付けられました。

巨人のブーツ

巨人のブーツ
Mc Cools Boot, Giants Causeway, Northern Ireland by John Morton, on Flickr

ここでは、伝説の巨人が履いていたかもしれないという、岩の浸食が進んでできたブーツのような石を見ることができます。

ピナクルズ

海岸の断崖の中腹には、ピナクルズ(尖塔)のような形をした石がそびえたっています。六角形の柱が宮殿の石塔のように伸びている姿は、まさに圧巻です。

チムニー・トップス

チムニー・トップス
The Chimney Tops by Mark Horrell, on Flickr

切り立った崖の向こうには、煙突のような形をした棒状の突き出た岩が存在します。チムニーとは煙突という意味です。非常に特徴がある石なので、遠くからでもその姿はよくわかります。

他にも、ジャイアンツ・コーズウェーには、ラクダのような形をした岩の「キャメル」や、老婆のような形をした「グラニー」といった石を見ることができます。

国名 / エリア イギリス / ヨーロッパ
登録年 1986年
登録基準 自然遺産 (vii) (viii)
備考 ■関連サイト
Giant's Causeway and Causeway Coast(UNESCO)

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