古都メクネス

Historic City of Meknes

古都メクネス(Meknes)は、モロッコ北部の都市で、イスラム王朝時代に栄えた歴史的都市です。1996年にユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録され、その歴史的・建築的価値が高く評価されています。メクネスは、17世紀にモロッコ王ムーレイ・イスマイルの治世下で首都として繁栄し、王宮やモスク、城門、庭園など壮麗な建築群を次々と建設しました。王の権力と威厳を示す都市計画は、他のモロッコの都市とは異なる独自性を持ち、イスラム・アラブ文化とヨーロッパの建築影響が融合した都市景観が特徴です。

メクネスの都市景観の中で特に有名なのが、「壮大な城門群と王宮(Dar El-Makhzen)」です。城門は、アーチ型や装飾的なタイルで彩られ、ムーレイ・イスマイルの権威と都市の象徴として建設されました。なかでも、バブ・マンスール(Bab Mansour)門はモロッコ最大級の門で、白大理石の柱や精緻な幾何学模様の装飾が施されており、世界遺産としての価値を象徴しています。王宮は広大な敷地を持ち、宮殿、モスク、庭園、馬舎などが整然と配置され、計画都市としての優れた例とされています。

また、メクネスは、商業地区や旧市街(メディナ)の保存状態も良好で、伝統的なモロッコの生活様式を今に伝えています。狭い路地や市場(スーク)、住宅の造形は、都市計画と生活文化が調和していることを示しており、訪問者は歴史的都市空間の中で現代の暮らしと出会うことができます。さらに、周辺の農地や水路の配置も、都市計画と農業の合理的結びつきを示す重要な要素として評価されています。

古都メクネスの世界遺産登録の意義は、ムーレイ・イスマイル時代の壮大な都市建設と計画都市の遺構を保存している点、およびイスラム建築と都市文化の融合を示す例としての価値にあります。現在も都市は人々の生活の場であり、観光資源としても活用されている一方で、建築物の保存、観光圧力、都市化の影響といった課題が存在します。ユネスコとモロッコ政府は、伝統的建築の修復や保存活動を進めつつ、住民との協力による保全管理を行っています。

総じて、古都メクネスは、イスラム世界の都市計画、王権象徴の建築、伝統的な市街地の保存を一体的に示す貴重な文化遺産です。壮麗な城門や宮殿群を歩くことで、訪問者は17世紀の王権の威厳と都市の歴史、そして現代に生きる伝統文化を同時に体感することができます。モロッコの歴史と文化を理解する上で、不可欠の都市遺産といえるでしょう。

国名 / エリア アフリカ / モロッコ
登録年 1996
登録基準 文化遺産 (iv)
備考 ■関連サイト
Historic City of Meknes(UNESCO)

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