ジェミラは、アルジェリア北東部の山岳地帯に位置する古代ローマ都市の遺跡で、1982年にユネスコ世界遺産に登録されました。その名はアラビア語で「美しい」を意味し、標高約900メートルの高地に築かれたこの都市は、ローマの都市計画と建築技術が山岳地形に見事に適応された稀有な例とされています。
紀元1世紀末、ネルウァ帝時代に「クイクル(Cuicul)」という名で建設され、退役軍人の入植地として発展しました。都市は碁盤目状に整備され、フォーラム(公共広場)、カピトリウム(神殿)、浴場、劇場、商業施設などが配置され、後にはキリスト教のバシリカや洗礼堂も建てられるなど、多様な宗教文化の共存が見られます。
保存状態が非常に良好で、モザイク画や石造建築の細部も現存しており、訪れる人々に当時の生活や美意識を伝えます。特に、ジェミラ博物館に展示されているモザイクは、北アフリカ随一の美しさと称されます。
山間の静かな風景と調和した都市遺構は、自然と文明の融合を体現しており、考古学的・歴史的に極めて高い価値を有しています。ジェミラは、古代ローマ文明の広がりとその地方への適応を示す貴重な証拠として、今日でも多くの研究者や観光客を魅了しています。
