世界遺産「アクスム」は、エチオピア北部のティグレ州に位置する歴史的都市で、かつてアクスム王国の中心地として栄えました。アクスム王国は紀元前1世紀から中世にかけて東アフリカで最も強力な国家の一つであり、紅海貿易の要衝として繁栄しました。そのため、アクスムはアフリカとアラビア半島、さらには地中海世界を結ぶ重要な交易拠点となりました。
アクスムの最大の特徴は、巨大な石造モニュメント「ステラ」と呼ばれる石柱群です。これらは紀元4~5世紀頃に建てられ、王や貴族の墓標としての役割を果たしました。高さは最大で約24メートルに達し、精巧な彫刻と技術力の高さを示しています。また、アクスムには初期キリスト教遺跡も多く、4世紀にエチオピアが世界でも早い時期にキリスト教を国教とした歴史を物語っています。特に「聖櫃(アーク)」が祀られていると伝えられる聖マリア教会は、信仰の中心地として今も巡礼者が訪れます。
1980年にユネスコの世界遺産に登録されて以来、その歴史的・文化的価値が国際的に認められ、考古学的調査や保存活動が進められています。アクスムはエチオピアの古代文明を象徴する重要な遺産であり、東アフリカの歴史と文化を知るうえで欠かせない場所です。

